えほんのいずみ

「3びきのかわいいオオカミ」

この絵本について―イギリスの昔話「3びきのこぶた」とは
           逆パロディの、ゆかいな絵本
                                                                         

作:ユージン・トリザビス
 
絵:ヘレン・オクセンバリ―
   
訳:こだまともこ

出版社:冨山房
       
出版社による対象年齢:3・4・5歳~ 
       
発行年度:1994年 5月

定価:1540円 

                         
 はじめに


   この絵本の原題は“The Three Little Wolves and the Big Bad Pig”、

   (3びきのかわいいオオカミと悪いおおブタ)です。 
              
   本作は全国学校図書館協議会選定図書、日本図書館協会選定図書でした。 

   イギリスの昔話「3びきのこぶた」の逆のパロディともいわれ、そのお話を知って

   いる多くの子どもたちにとって、大笑いのたねになること、間違いなしで

   しょう。

   

   
 あらすじと随想


   あるところに、ふわふわの毛皮、ふさふさのしっぽのかわいい3びきのオオカミの子
 
   がいました。

   ある日、お母さんオオカミは子どもたちに“そろそろ広い世界に、出て行きなさい。

   でも、悪いおおブタには、気をつけるのよ”と言いました。

   早速、子どもたち3びきは、カンガルーにレンガを分けてもらい立派な家を建てまし

   た。

   すると次の日におおブタがやってきて“おいおい、ちびオオカミ。中に入れろ ! ”

   と怒鳴りました。ちびオオカミたちが“いやだよ。いやだ。入れないよ”と答えると、 

   おおブタは大きな息を吹いてレンガの家を壊そうとしました。でもびくともしませ

   ん。ところが、大きなハンマーでメチャクチャにされたときには、怖くて震え上がって

   しまいました。

   

   ともかくおおブタは、とんでもないワルだったのです。

   次に、子どもオオカミがコンクリートのうちを建てると、おおブタは電気ドリルで家

   をこなごなに打ち砕き、その次に鉄骨と鉄板で家を建てたときも、ダイナマイトを使っ

   て、オオカミの家をこっぱみじんにしてしまいました。

   そのとき、いのちからがら逃げだしたオオカミの子どもたちは考えたのです。

   “今まで間違った材料でうちを作ってきたからだめだったんだ。今度は、もっと違う
  
   ものでうちを建てよう”と。
       
   それから3びきは、どんな家を建てたでしょうか。

              

 随想とまとめ


   もし、イギリスの昔話「3びきのこぶた」を自立の物語と解釈するなら、この絵本も

   3びきの子どもおおかみが、自立を目指して家を建てる物語と、いえるかもしれませ

   ん。

   しかし、人生の荒波から身を守り、豊かに生きていくためにはどうしたらよいのか。 

   そのことが、おおブタとの戦いを通して、より深く思索されるストーリィのように思 

    います。 

   つまり、昔話「3びきのこぶた」がワラの家、木の家、レンガの家という防御の堅固
   
   さを増すのに反して、「3びきのかわいいオオカミ」は“今までとは違う材料でうち 

   を建てよう”という発想の転換をしたのです。

    

   そして、フラミンゴにどっさり花を分けてもらい、花の家を建てました。

   床には、ひなぎくのカーペットを敷き詰め、壁はキンセンカやバラやスイセンで作 

   り、天井やお風呂場にも花を置きました。 

   すると、次の日、襲ってきたおおブタは、その家を倒そうとして、何度も大きな息を 

   するうちに、花の香りで心がだんだんやさしくなりました。そして“自分は今まで何

   てひどい、悪ブタだったんだろう”と改心したのです。心癒されて良いおおブタに変
                                                                
   わると何だか楽しくなり、愉快なダンスさえ踊り始めました。

   それを見た3びきのかわいいオオカミたちは嬉しくなり、おおブタに「こんにちは」

   と初めてあいさつをし、一緒に遊びました。そして4ひきは仲良く暮らすことに

   なったのです。

   こうして物語は大団円を迎えます。
    

   それまで子どもおおかみは、悪いおおブタから何度も攻撃されてきたにもかかわら 
          
   ず、あるいは攻撃されたがゆえに、新しい気づきを得ました。

   あの暴力的なワルのおおブタが改心する驚きの結末には、大逆転のユーモアさえ感じ

   られます。

   それにしても、ダイナマイトまで使って子どもオオカミの家を壊した残酷なおおブタ 
          
   が、力よりも花の香りで改心したとは、大自然の威力と癒しの力に驚きます。

   その意外性がおもしろくて、肩の力が抜けます。

   暴力にまさるものが可憐な花々だったというお話の展開には、犯罪学者である本作の

   作者ユージーン・トリビザスの、優れた発想力も関わっているのかもしれません。

   その表現力を実らせたのが、年齢を超えて楽しめる、絵本という媒体なのも嬉しい

   限りです。

    

   何よりヘレン・オクセンバリ―の絵が秀逸で、スリルと迫力に満ちています。  

   オオカミの子たちの家をメチャメチャにするときのおおブタのワルの目つきや、

   残虐な表情が怖すぎる!でも怖がるオオカミとの対比が、画面としてはどこか  

   ユーモラスなのです。そして、何より子どもオオカミとおおブタが仲良くなる 

   ハッピーエンドは、楽しさいっぱいでほっこりします。  

   子どもも大人も愉快になり、笑える絵本でしょう。

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